情事はベッドの上でなければ嫌。

しかし気分次第で場所を選ばず誘う。

前戯はキスからされるのに弱くて、あまり長いと恥ずかしくてストップさせる。

今だってソファの上で情事に入ろうとしているが、誘ったのはルルーシュから。

そう言えば初めてもこのソファからだったっけ……



どちらとも無く、告白したかさえも分からない。

けれどそれが自然の事であった様に、僕とルルーシュは惹かれ合った。

二人っきりになった部屋。

少し頬を朱に染め、うつ向くルルーシュの顔に影が映る。

「スザク…」

「ルルーシュ?」

躊躇うようにゆっくりとルルーシュの唇が動く。

しなやかなラインを描く口許は、色っぽさをも映し出していた。

「今日は軍に戻るのか?」

「ううん。今日は帰らなくても大丈夫だよ」

そう答えるとルルーシュの顔には朱が増していく。

「今夜は泊まっていけ」

命令口調なのにどこか弱気な雰囲気さえ漂う声。

僕はルルーシュの深い思考などみじんも感じずに、一緒に過ごせる事が単純に嬉しかった。

「ルルーシュと一緒に居られて嬉しいよ。沢山話だって出来そうだし」

離れていた間の事、昔の思い出…

何を話そうかワクワクしてしまう。

しかしルルーシュはそんな僕をお気に召さなかったらしい。

耳元に吐息が触れる距離まで猫の様に、しなやかに近付いたルルーシュは僕にそっと囁く。

「………スザクと、したい…」

驚きルルーシュを見ると、目は潤み、心なしか頬も上気していた。

年相応な照れの中にある妖艶な顔に、僕は微動だに出来なくなる。

一種の蛇に睨まれた蛙状態だろうか。

ルルーシュの唇が躊躇い無く僕の唇に触れた。

子どもの頃にした挨拶のキスでもなく、触れるだけのキスでもない。

しっかりとルルーシュだけを見る事しか叶わない様に、頬を両手で抑えられて、まるで映画の恋人たちのワンシーンの雰囲気だ。

舌を絡ませるルルーシュは積極的なくせに、此方からも答えようとすると退いてしまう。

正直に言うと、そんな初初しいルルーシュの姿に欲情してしまった。

胸が無駄に高鳴り、息が乱れる。

それに比例するかの様に冷静な思考も乱れ始める。

ゆっくりとルルーシュは顔を僕から放すと、自分の制服のボタンやホックを外してゆき、前だけはだけた状態になった。

雪のように白い肌はきめ細かく、まだ何者にも侵略されていない雪原の様だ。

「綺麗だね、ルルーシュ……」

感じた事をそのまま口に出しただけなのに、さっと刷毛で朱を引いたようにルルーシュの顔は紅くなる。

「や、優しくしろよ、スザク」

手の甲を口元にやり、目線をそらしてそう言うルルーシュは、照れて居るものの、あくまで強気に命令口調だった。

そんな姿が可愛らしくて、つい微笑む。

仰せのままに、お姫様。

そして僕はルルーシュの手を自分の方に引きよすと、手の甲に忠誠の誓いの様にキスをした。

=続く=





**あとがき**
まだ続きます。
07.01.20